ブチロラクトンチオールは2006年に市場に導入された新しい還元剤で、ラクトン環と呼ばれる構造に、チオール基(SH-)が付いた化合物です。チオグリコール酸やシステイン、システアミンなどの還元剤は水によく溶けるのですが、ブチロラクトンチオールは水に溶けにくい(水100gに約10g程度しか溶けません)、つまり油性の強い還元剤であるという大きな特徴を持ち、この特徴からブチロラクトンチオールを配合した化粧品ヘアセット料は酸性でも強いカールを得ることが出来るのです。
なぜ、ブチロラクトンチオールが酸性でも強いカール形成力を持つのかというと、酸解離定数(PKa値)の値が小さいほど低いpHでチオレートアニオン(-S)を生成しますが、ブチロラクトンチオールのPKa値は他の還元剤よりも低いので、低いpH(酸性域)でチオレートアニオン(-S)を生成しやすく、酸性域でも強い還元力を発揮することが出来るのです。
また、本来毛髪のキューティクルの表面は親油性であるため、水によく溶けるチオグリコール酸やシステインなどの親水性の還元剤は毛髪表面になじみにくくなります。
そのため、アルカリ剤を添加してpHを上げ、毛髪を膨潤させることでキューティクルの間を広げ還元剤は小さな分子の方が毛髪に浸透しやすく、強いカールを形成しやすいのです。ここで、ブチロラクトンチオールは、それほど分子量は小さくありませんが、油性の強い還元剤であるため毛髪表面になじみやすいので、アルカリ性にして毛髪を膨潤させなくても毛髪内部へと浸透していくのです。
このことも酸性域でカール形成力を得られる要因になっています。
ブチロラクトンチオールは化粧品ヘアセット料への使用は可能ですが、医薬部外品であるパーマ剤への配合は認められていません。