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誘導体

[ビタミンC=アスコルビン酸]

化粧品や医薬部外品では、「ビタミンC配合」などの表示をよく見かけると思います。
「ビタミンC」の科学名は「アスコルビン酸」ですが、化粧品や医薬部外品の全成分表示名称には「アスコルビン酸」や「◯◯アスコルビン酸」、「アスコルビン酸△△」などと書かれているものもあります。

この「◯◯アスコルビン酸」や「アスコルビン酸△△」は、「ビタミンC誘導体」とか「アスコルビン酸誘導体」と言われます。

次に、誘導体とは何でしょう。
ある化合物の一部に別の物質を結合させて(または置き換えて)できた物質のことを、元の化合物の「誘導体」と呼びます。
ある物質の一部に別の物質を結合させると、元の化合物の性質に、付加した物質の性質がプラスされることになります。

ビタミンCを例にすると、元のアスコルビン酸(ビタミンC)の1箇所の水素原子(H)がステアリン酸に置き換わると、ステアリン酸アスコルビルとなります。

本来、アスコルビン酸(ビタミンC)は水溶性であり、酸化され分解しやすい性質を持ちますが、これに水に溶けない性質を持つステアリン酸を付加して、水に溶けない性質を持つビタミンCとすることで安定性を向上させているのです。

同じく、化粧品原料でよく使われる「カルボキシメチルキチン」はキチン誘導体にしたものです。
キチンは、水や他のほとんどの溶媒に溶けない物質であり、そのままでは化粧品や医薬部外品に配合しがたい原料です。そのため、カルボキシメチル基を結合しやすくなります。

「カチオン化セルロース」はセルロース誘導体で、セルロースが本来持っている増粘性や増膜性に、カチオン性の物質を結合させてカチオン化して、毛髪への吸着性を高めることで、水で洗い流されにくくなり、セルロースの特徴を持続させることができます。

カチオン化PPTはPPTにカチオン物質を結合させることで、PPT本来の性質を持ちながら、カチオンの働きにより、毛髪に吸着しやすくなるという性質も併せ持つことができます。

シリル化PPTも、元のPPTの性質にシリコーンの持つ滑らかさを付与したり、ツヤ感を付与することができます。
このように、化粧品や医薬部外品には様々な物質の安定性や溶解性、他の性質を併せ持つようにするなどの目的で誘導体化された原料が、広く使用されています。

[美白作用のあるビタミンC誘導体]

「ビタミンC」は強い還元剤であり、他の物質の酸化を防止する作用が強く、酸化防止剤として化粧品や食品でよく使われます。
さて、肌の黒色化の原因であるメラニン色素はアミノ酸の一つてある「チロシン」を出発物質として、酵素の働きや酸化などの反応を経てつくられます。従って、このチロシンからメラニン色素への生成過程の酸化反応をビタミンCの還元作用で阻止してメラニン色素の生成を抑えたり、できてしまったメラニン色素を分解することが結果的に「美白」に繋がるため、「ビタミンC」は美白作用を持つというわけなのです。

しかし、ビタミンCは安定性が悪く、その活性を維持させることが難しいので、リン酸とマグネシウムやナトリウムなどを結合させて安定化させた「リン酸アスコルビルマグネシウム」や「リン酸アスコルビルナトリウム」などが水溶性のビタミンC誘導体として用いられています。
また、ステアリン酸やパルミチン酸などの油に馴染みやすい物質を結合させて安定化した「ステアリン酸アスコルビル」、「パルミチン酸アスコルビル」や「テトライソパルミチン酸アスコルビル」などは、肌への馴染みを向上させた、油溶性のビタミンC誘導体として用いられます。

[ビタミンC配合化粧品について]

さて、ビタミンCには美白効果があると説明しましたが、少し補足します。

化粧品や医薬部外品のなかで「美白」が効能・効果として謳わるのは、ビタミンCやビタミンC誘導体を有効成分とする医薬部外品の「薬用化粧品」だけです。しかも、その有効成分が美白目的に配合され、各社の試験で美白効果が確認されていることが条件となっています。

医薬部外品ではない一般の化粧品は、「美白」という効能・効果は謳えません。

しかし、先ほど説明しましたが、化粧品にもビタミンCやビタミンC誘導体が配合されたものがありますが、ビタミンCの役割は、「美白」のためではなく、製品自体の「酸化防止」が目的なのです。

クリームなどで使われる油脂類などは、空気で酸化されやすいものも多く、これらの酸化防止の目的でビタミンCや、ビタミンEがよく使われます。

ビタミンCやビタミンEは強い還元作用を持ちますので、他の物質が酸化されるよりも先に、自身が酸化されることで、油脂など他の物質の酸化を防止するということです。
化粧品だけでなく、食品にも同様の目的でよく使われています。

従って、ビタミンCを酸化防止剤として配合した医薬部外品や化粧品には、「ビタミンC配合」による「美白効果」を連想させるような表示はできず、「製品の安定剤」や「製品の抗酸化剤」などの「ビタミンC」の配合目的を併せて記載するルールがあります。

ちなみに、食品から摂ったビタミンCは代謝されずに、直接、血液中から細胞へ効率よく運び込まれるようです。ビタミンCはやっぱり、野菜や果物からたくさん摂った方がいいのかも知れませんね。

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