アンモニアはNH3で表される無機化合物で、常温・常圧では無色の気体で、特有の刺激臭を持ちます。水によく溶けるため、取り扱い易い水溶液(アンモニア水)がよく使用されています。
名称の由来は、エジプトのアモン神殿の近くからアンモニウム塩が産出したことによるとされています。
アンモニアは肥料の原料等として使用されるほか、パーマ剤や染毛剤では、アルカリ剤として配合されています。
また、パーマ剤第1剤の還元剤として使用されるチオグリコール酸アンモニウムは、チオグリコール酸をアンモニアで中和してつくられています。
中和して塩(えん)にすることで、チオグリコール酸単体よりも安定性が良くなるからです。
パーマ剤と染毛剤におけるアルカリ剤の働きは、パーマ剤と染毛剤の有効成分を毛髪内に浸透しやすくするために、アルカリ剤で毛髪内のイオン結合(塩結合)を切断して毛髪を膨潤させることです。
また、パーマ剤第1剤の有効成分である還元剤、染毛剤第2剤の有効成分である過酸化水素水の働きを促進させる効果もあります。
しかし、施術中に毛髪内に残ってしまう(残留アルカリといいます)と毛髪を傷める原因となるため、注意が必要です。また、パーマ剤の場合は残留アルカリにより第2剤の酸化作用が不十分となり(酸化作用は酸性側で促進されるので)ウェーブのダレ等の原因にもなります。
アンモニア(NH3)は水溶液中では、一部がアンモニウムイオン(NH4+)と水酸化イオン(OH-)になっており、アルカリ性を示します。
パーマ剤や染毛剤の全成分表示を見ると、アンモニアではなく「強アンモニア水」と表示されているのは、パーマ剤や染毛剤には、水に溶かした水溶液であるアンモニア水として供給されている原料が配合されているからです。アンモニア水は、少量の添加で高いpHを得ることができ、揮発性が高いことが特徴です。
アンモニア水を使用したパーマ剤の良い所は、施術中にアンモニアが揮発するので、パーマ剤のpHが低下して毛髪に対してのオーバータイムによる過剰反応を少なくすることです。また施術中でも毛髪や皮膚に残留しにくく、残留アルカリによる毛髪へのダメージが少ないのです。
しかし、揮発性が高い為に、施術中やパーマ液からアンモニア独特の刺激臭を感じてしまうことにもなります。
また、パーマ剤第1剤の容器のふたを開けたまま放置したり、使用前の薬液を長時間放置してしまうと、アンモニアが揮発してしまいパーマ剤の働きに影響がでてしまうので注意が必要です。
・水溶液中のアンモニアの状態
NH3+H20⇔NH4++OH-