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バッファー作用

[同じpHを保とうとする作用がバッファー(緩衝)作用]

パーマ剤や染毛剤の多くはアルカリ剤が配合されており、処理後に毛髪に残った残留アルカリを除去するために、アフター酸リンスをされる方も多いと思います。今回はその酸リンスの説明でよく見られる、「バッファー作用」とはどんな作用なのかについて説明します。

「クエン酸」と、その塩である「クエン酸ナトリウム」の2種類が混合された水溶液と「クエン酸」のみの水溶液にそれぞれアルカリ溶液を加えたとき、混合液の方がクエン酸のみよりもpHの変化が小さくなります。
このように、あるpHの溶液に、これとは異なるpHの酸やアルカリを加えてもpHの変化が少なく、同じpHを保とうとする作用をバッファー作用(緩衝作用)といい、バッファー作用をもつ溶液をバッファー溶液(緩衝液)といいます。

[酸やアルカリと塩の組み合わせでバッファー作用が発揮される]

では、どのような溶液がバッファー作用を持つのでしょうか。
クエン酸は水に溶解すると、その一部が-(マイナス)のクエン酸イオンと、+(プラス)の水素イオンになり、イオンにならないクエン酸分子と共存します。そして、その水溶液のpHはこの水素イオン濃度によって決まります。このようなイオンになりにくい酸を弱酸といいます(水に溶かすと、そのほとんどがイオンになる酸を強酸といいます)。

一方、塩である「クエン酸ナトリウム」は、+のイオンと-のイオンが結合してできた物質ですから「クエン酸ナトリウム」を水に溶かすと、+のナトリウムイオンと、-のクエン酸イオンなや完全に分かれます。

クエン酸のみの溶液なや酸(水素イオン)を加えると、水素イオン濃度な大きく増加しますので、pHは酸性に傾き、アルカリ(水酸化イオン)が加えられると、水素イオン濃度は大きく減少しますので、pHはアルカリ性に傾きます。

これに対し、クエン酸とクエン酸ナトリウムの混合溶液中には、クエン酸イオン、水素イオン、クエン酸分子が共存しています。
そのため、酸(水素イオン)を加えた場合は、クエン酸イオンと加えられた水素イオンが結合してクエン酸分子が生成し、最初と同じようにクエン酸分子の一部が水素イオンになりますので、結果として水素イオンの濃度はあまり変化しないことになります。

アルカリ(水酸化物イオン)を加えた場合は、水素イオンと水酸化物イオンから水ができ、クエン酸分子の濃度は下がりますが、低下した濃度に見合った水素イオンがクエン酸分子からできますので、これも水素イオンの濃度はあまり変化しないことになります。

このように、バッファー作用は、イオンになりにくい酸あるいはアルカリと、塩とを組み合わせることで作用を発揮します。

化粧品や医薬部外品で使われるバッファー溶液は、ほとんどが弱酸と塩の組み合わせです。

[酸リンスは毛髪を等電点に戻すことが役割]

では、なぜ酸リンスに「バッファー作用」をもたらせるのでしょうか。
アルカリ溶液にバッファー溶液と、バッファー溶液をもたないの溶液を加えたときのpHの変化は、バッファー溶液をもたない方はどんどんpHが下がっていくのに対し、バッファー溶液の方はpH5付近で収束します。

このように、パーマ剤や染毛剤処理後、残留アルカリを除去するために、バッファー作用をもたない酸リンスで処理をすると、毛髪は酸性に傾き過ぎてしまいますが、バッファー溶液の酸リンスで処理をすれば、毛髪を弱酸性、いわゆる「等電点」に戻すことができるのです。

このように、酸リンスは、毛髪を等電点に戻すという目的のためにバッファー作用が用いられています。

また、バッファー作用は、その溶液のpHの変化を小さくする作用ですので、温度や時間の経過に伴ってpHが変化してしまうと効果が劣ってしまうような製品には、バッファー作用をもたせてpHを一定に保つことで、製品の変質を防ぐという目的にも用いられています。

ほどんどのパーマ剤2剤は、安定性向上の目的でバッファー効果をもたせてあります。

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