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塩(えん)

[チオグリコール酸塩やブロム酸の塩(えん)ってなに?]

「塩(えん)」とは、プラスイオンとマイナスイオンがイオン結合で結びついた物質をいい、その大半が中和反応(酸とアルカリの混合により、塩と水が生成される反応で、反応後はpHは中性になる)により生成されます。

「塩」は無機塩、有機塩に大別されます。身近にある無機塩が、塩(食品などのて使われる「しお」)であり、化学名は「塩化ナトリウム(NaCl)」という物質です。

塩化ナトリウムは、ナトリウムというプラスのイオン(Na+)と塩素というマイナスのイオン(Cl-)が結合してできた物質です。
「塩」は、一般的に水に溶ける(水溶液)とプラスイオンとマイナスイオンになります。(これを電離といいます。)
塩を水に溶かした場合、プラスのナトリウムイオン(Na+)とマイナスの塩素イオン(Cl-)になりますが、このように塩は水に溶かすと結合が切れてイオンになります。

さて、「塩」を大別すると、無機塩と有機塩に分けられることを記述いたしました。科学での有機、無機の概念は、概ね炭素(科学記号で「C」)を含むか含まないかで分けられ、炭素を含む物質が有機物で、含まない場合は無機塩に分類されます。
しかし例外として、呼吸で排出される二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)は炭素を含んでいても無機物とされています。

「塩」と有機物・無機物の基礎がわかったところで、本題の「チオグリコール酸塩」や「ブロム酸塩」について説明します。

[チオグリコール酸塩やブロム酸塩ってどんな物質]

チオグリコール酸塩について考えてみましょう。「塩」とは、プラスイオンとマイナスイオンからできていると説明しました。
チオグリコール酸塩のチオグリコール酸は、マイナスイオンにあたります(SHCH2COO-)。では、プラスイオンはどうでしょうか。単なる「塩」と記載されているだけで、成分は特定されていません。

つまり、チオグリコール酸塩は、マイナスイオンのチオグリコール酸に、何らかのプラスイオンが結合した物質の総称ということです。
パーマ剤の有効成分であるチオグリコール酸塩の一種の「チオグリコール酸アンモニウム」は、アンモニウムイオン(NH4+)がプラスイオンとして結合した物質で、「チオグリコール酸モノエタノールアミン」は、エタノールアミン(HOCH2CH2NH3+)がプラスイオンとして結合した物質です。

パーマ剤でのチオグリコール酸の働きは、毛髪のシスチン結合を切断する還元作用であることはご存じかと思います。「チオグリコール酸アンモニウム」や「チオグリコール酸モノエタノールアミン」は、いずれも還元作用があり、科学的な働きはほぼ同じであり、このように科学的な働きが変わらない成分について、プラスイオンの部分を総称して「塩(えん)」と記載するとこがあります。

一方、ブロム酸塩のブロムとは、臭素(元素記号はBrで、英語では、Bromine)の俗称で、正式には臭素酸塩といいます。
ブロム酸と臭素酸は同じ物資を指します。臭素酸塩は、臭素酸がマイナスイオン(BrO3-)で「塩」を形成するプラスイオンは、主にナトリウムイオン(Na+)やカリウムイオン(K+)が用いられ、それぞれ臭素酸ナトリウムや臭素酸カリウムとなります。

チオグリコール酸は、炭素を含む物質ですから有機物です。従ってチオグリコール酸は、有機物の塩ですが、臭素酸塩は、炭素を含まないため、無機塩となります。この他、化粧品等で使用されている「塩」には、クエン酸塩やリン酸塩などがあります。これらの「塩」は、バッファー作用を持つ物質もあります。

[医薬部外品と化粧品での成分名の表記の方法について]

製品に記載されている成分表示について、医薬部外品と化粧品とでは表記方法が異なり、同じ成分でも記載内容が異なっていることにお気づきでしょうかわ、ここで少しチオグリコール酸塩を用いて説明します。

カーリングセット料(化粧品)に通常チオグリコール酸アンモニウムやチオグリコール酸モノエタノールアミンを配合した場合には、当する成分名をそのまま表示し(チオグリコール酸モノエタノールアミンはチオグリコール酸MEAとも表示できます)、「チオグリコール酸塩」と名称は使用できません。

しかし、パーマ剤(医薬部外品)の場合には、包括して「チオグリコール酸塩」と表示しても、化粧品と同様に個々の名称を表示しても良いことになっています。

これは化粧品と医薬部外品では、表示のルールが異なるためです。化粧品は薬事法で全ての成分を表示することが義務付けられているのに対して、医薬部外品は特定の成分(表示指定成分と呼ばれるものです)だけを表示すれば良いことになっています。そして、この特定成分に複数の名称が認められているため、色々な名称が使用できるのです。

このように、医薬部外品は一部の成分だけを表示すれば法的には問題ないのですが、情報開示を積極的に行うため、製造メーカー等の集まりである業界団体で医薬部外品も化粧品と同様に全ての成分を表示する自主基準を取り決めています(「有効成分」と「その他の成分」で分けて表示することも自主基準で決められています)ので、ほとんどの医薬部外品で全成分表示が表示されているのです。

「◯◯塩」とは、科学的な性質が類似した複数の物質を一括で表現できる便利な言葉です。美容の仕事は、科学と隣り合わせです。このように少しの科学用語を学ぶことも大切なことです。

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