化学物質の分子骨格に結合して、その化学物質に特有の性質や機能を持たせる原子の集合体を「官能基」と呼びます。「官能」という言葉は、性的感覚という意味だけでなく、味覚や匂いなどの感覚の意味もあります。
食品や車などの機能をテストする際に使われる言葉が「官能テスト」と呼ばれたりします。
ともあれ、「官能基」とはその化学物質に結合することである機能や性質を与えるものなので、現在の日本語では”機能基”と表現するほうが理解しやすいかもしれません。
このような官能基の一つにアミノ基があるます。アミノ基は窒素原子(N)と水素原子(H)から成り、化学式では「-NH2」と表現されます。
同一分子内に、性質の異なるアミノ基とカルボキシル基という2つの官能基を持つ代表的化学物質としてアミノ酸があります。
アミノ酸はケラチンをはじめとしたタンパク質の構成成分です。
アミノ基の特徴として、水溶液中で水素イオン(H+)を受け取ることで電気的にプラスを帯びた陽イオン(-N+H3)となることが挙げられます。
このように水溶液中で水素イオンを受け取る性質を塩基性といいます。塩基性はpHと密接な関係があり、水溶液のpHが小さいときは水素イオンが多く存在するため、アミノ基は水素イオンを受け取って陽イオンになりやすくなります。つまり、アミノ基を持つ科学物質はpHが小さいほど電気的性質がプラスになりやすくなります。
逆にpHが大きいときは水素イオンの存在が少ないため、アミノ基は水素イオンを受け取りにくく、陽イオンになりにくくなります。このようなアミノ基のもつ塩基性は、pHの違いによる化学物質の溶解性や電気的結合性などに影響を与えます。
アミノ酸はアミノ基とカルボキシル基の両方を持つと先述しましたが、アミノ酸の中でもアミノ基を2つ持つものは塩基性アミノ酸と呼ばれ、一般的にpHが小さいほどプラスの電荷量を多くもつ性質があります。
分子内のプラス電荷とマイナス電荷が同量でつり合ったときの、pHは等電点といわれ、各アミノ酸ごとにそれぞれの等電点があります。
アミノ酸は各等電点を境にして電気的性質の傾向が変わります。
*ケラチンを構成しているアミノ酸の等電点(pH)
・酸性・・・アスパラギン酸 2.8
グルタミン酸 3.2
・中性・・・アラニン 6.0
グリシン 6.1
イソロイシン 5.9
ロイシン 6.0
メチオニン 5.7
シスチン(システイン) 5.0(5.1)
フェニルアラニン 5.5
プロニン 6.3
トレオニン 5.6
セリン 5.7
トリプトファン 5.9
チロジン 5.7
バリン 6.6
・塩基性・・・アルギニン 10.8
ヒスチジン 7.5
リジン 9.7